2018年の秋、ソフトバンクグループがリリースしたPayPayの巨大キャンペーンが打ち上げられたのを機に、一気に熱を帯びてきたキャッスレス界隈。
その後、バーコード・QR決済、電子マネー決済は順調に利用者を増やしつつ今に至ります。スマホ決済業界で図抜けたポジションを獲得したのは、新参ながらも度重なる大規模キャンペーンの効果により、一気に台頭してきたPayPayと言えるでしょう。
店舗側の導入コストの安さと企業側の圧倒的な営業力で、チェーン店のみならず町中の商店や喫茶店などでも広く採用されたことも普及の一因かと思います。
しかしながらそれでもクレカを除くキャッシュレス決済で圧倒的支持を得ているのが交通系ICカードであるSuica。
ラッシュ時間帯でも券売機の前で並ぶこともなく、決済速度の速さから改札でももたつかず、ポイント還元も悪くないことが人気の理由であろうかと思います。
交通系ICカードの中では段違いの利用者数を誇るSuicaですが、全国の鉄道会社・事業者により地元民しか知らないようなモノを含めてあらゆる種類のICカードが発行されています。
そして2013年に全国相互利用サービスが展開されたことにより、各種ICカードは元々の垣根を超えて利用できるようになりました。
それでもそれぞれの担当エリアのICカードは独自の強みを持っているため、使い方次第でSuicaよりお得になったり、または損をしたります。
ここでは全国相互利用に対応するICカードに絞って、メリットやデメリットについて簡単にまとめてみました。
名称 | Kitaka | Suica | PASMO | TOIKA | manaca | manaca | ICOCA | PiTaPa | SUGOCA | はやかけん | nimoca |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
発行会社 | JR北海道 | JR東日本 | 株式会社PASMO | JR東海 | ㈱名古屋交通開発機構 | ㈱エムアイシー | JR西日本 | ㈱スルッとKANSAI | JR九州 | 福岡市交通局 | ㈱ニモカ |
発行枚数(枚)(2019年9月時点) | 160万枚 | 7600万枚 | 3800万枚 | 290万枚 | 680万枚(エムアイシー合算) | 680万枚(名古屋交通合算) | 2140万枚 | 330万枚 | 289万枚 | 133万枚 | 400万枚 |
還元率(チャージ) | JRタワースクエアカード Kitacaで0.1% イオンカードKitacaで0.5% | 1.5% ビューカードでチャージ時 | 0% | 0% | 0.5~1% wellow card | 0.5% 名鉄ミューズカード | 0.5~1.25% クレカによる | 0.5~1.5% | 0.5% JQ CARDなど | 0% | 0.3~0.5% クレカによる |
還元率(乗車) | 0% | Suicaカードは運賃の0.5% モバイルSuicaは運賃の2% JRE POINTで還元 | 複数の乗車ポイント | 0% | 0~30% マイレージポイントで還元 | 0~約14% マイレージポイントで還元 | 0~50% ICOCAポイントで還元 | 0~15% 減算 | 1% JR九州のみ | 約2~3.5% 福岡市営地下鉄のみ | 1~約2% 電車の場合 |
還元率(買い物) | 0% | 0.5~1% 駅ナカ、駅ビルなどで買い物 対象以外は0% | 0% | 0% | 0% | 0.5% 加盟店での買い物のみ | 0.5% 加盟店での買い物のみ | 不明 加盟店のみ | 0% | 0.5% 加盟店での買い物 | |
支払い方法 | チャージ | チャージ | チャージ | チャージ | チャージ | チャージ | チャージ | ポストペイ・チャージ | チャージ | チャージ | チャージ |
オートチャージ | ✕ | ◯ | ◯ | ✕ | ◯ | ✕ | ✕ | ✕ | ◯ | ✕ | ◯ |
チャージ額上限 | 2万円 | 2万円 | 2万円 | 2万円 | 2万円 | 2万円 | 2万円 | 2万円 | 2万円 | 2万円 | 2万円 |
払い戻し手数料 | 220円 | 220円 | 0円 | 220円 | 220円 | 220円 | 220円 | 220円 | 220円 | 220円 | 220円 |
おサイフケータイ対応 | ✕ | ◯ | ◯ | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ |
ポイント還元事業への参加 | ✕ | ◯ | ◯ | ✕ | ✕ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ✕ | ◯ |
還元事業で得られるポイント 還元タイミング | ✕ | JREポイント 翌月上旬に前月分を付与 | PASMO専用ポイント 10日後~約3ヶ月後 | ✕ | ✕ | ミュースターポイント 翌月中 | ICOCAポイント 利用から10日後~約3ヶ月後 | ショップdeポイント 即座 | JRキューポ 翌月 | ✕ | nimocaセンターポイント 翌月 |
還元を受けるための作業 | ✕ | JRE POINTサイト で登録必須 | PASMOサイト で登録必須 | ✕ | ✕ | manacaサイト で登録必須 | ICOCAサイト で登録必須 | 不要 | 不要 | ✕ | 不要 |
目次
Kitaca

JR北海道が発行する、全国相互利用可能な交通系ICカードです。JRが定めた道内のエリアのみで利用可能。エリアを跨った利用では利用は出来ない仕様になっています。
利用可能路線は、
・函館本線
・札沼線
・室蘭本線
・千歳線
と数ある路線の中でも一部の対応となっています。キャッシュレスで素早く改札を通過できるという以外にあまりメリットがないのが特徴。以下にまとめます。
メリット
- KITACAにチャージする場合、クレジットカードを使うとポイントが貯まります。JRタワースクエアカードでチャージすると100円につき1ポイント。「イオンカード Kitaca」でチャージすると200円につき1ポイント(ときめきポイント)。JRタワースクエアカードでの利用がよりお得な還元率になっています。
デメリット
- オートチャージに対応していない。
- 札幌駅を中心として一部の路線、駅にしか利用できない。
- 乗車回数や利用金額などに応じた、乗車ポイントが付かない。
- 電子マネーとして利用してもポイントが付かない。そのためキャッシュレスポイント還元事業での対象外になっています。
総評
ひと月に往復合わせて十数回程度でしたら、Suicaのほうがお得。
Suica

PASMO

関東地方にお住まいで日常的に鉄道、バスをご利用の方にはお馴染みのICカード。 Suicaと比較してメリットが少ないのですが、一部の私鉄利用者にはSuicaよりも経済的な利点があります。
メリット
- 私鉄の単独路線において定期が載せられる。Suicaは連絡定期のみ載せられます。
- 払い戻し手数料が無料。
- メトポというサービスにより東京メトロを利用の方は、平日に乗車すると1日で3ポイント付与。東京メトロの最安区間IC料金は168円なので、往復での利用は還元率約0.8%
- 上記で土日祝日に乗車すると1日で7ポイント付与。IC料金は168円で往復するとは還元率約1.9%
- PASMO単独カードではなく、クレカ一体型になりますがTo Me CARD Prime PASMOを利用すると更にポイントアップ。平日の1乗車毎に10ポイント付与。上のメトポと合わせて往復で計算すると、IC料金168円区間では23ポイント付与され、還元率は13.7%になり大変オトク。土日祝日でこのクレカを使うと20ポイント付与。還元率は更にアップし25.6%にもなります。メトポ、メトロポイントのいずれもPASMOにチャージ可能。
デメリット
- Suicaと比較してメリットのない路線がほとんど。
- 電子マネーとしてお店で買物をしても基本的にポイントが付きません。例外的にTo Me CARD系のカードでPASMO払いを、東京メトロ構内店舗で行うと200円につき1ポイント還元されます。
- 2020年3月からスマートフォンで改札を通過できる「モバイルPASMO」のサービスが始まりましたが、iphoneには非対応。
総評
私鉄利用でも大抵の場合、Suica×ビューカードを利用したほうが得するケースが多いと思います。
TOICA

JR東海発行のICカード。東海地方がターゲットエリアですが、全国で使用可能。
乗車ポイントや、電子マネーによる買い物ポイント、チャージポイントが一切なくメリットがありません。
Suicaを利用したほうが良いです。
manaca

㈱名古屋交通開発機構と㈱エムアイシーの2社が発行する交通系ICカード。こちらも各社ICカード発行会社が管理するエリアで相互利用が可能な汎用的な仕様になっています。
中京エリアをカバーしており、JR東海、近鉄などの路線や一部駅を除いてmanacaでの鉄道、バスの利用が可能となっています。
利用可能な路線は
・名古屋市営地下鉄
・名鉄前線
・あおなみ線
・豊橋鉄道
・リニモ
・名古屋市営バス、名鉄バス、ゆとりーとライン
の以上で一部を除いて乗車できます。
各種メリットがあり中京地区で普及しているmanacaですが、ひとつややこしい点があります。それはICカードの発行業者が2社であり、更に微妙な違いがある点です。
違いというのは電子マネーとして使用した場合で、㈱エムアイシーが発行しているmanacaのみ、キャッシュレスポイント還元事業でのキャッシュバックに対応しているということです。
違いはカードの印字で確認できますので、お手持のカードの発行元がすぐにわかります。
エムアイシー発行のmanacaは名鉄各駅の窓口などで購入可能。名古屋市営地下鉄では取り扱っていないですので、購入の際は職員に確認するのが良いでしょう。
㈱名古屋交通開発機構が発行するmanacaも交通系ICカードが使える店舗で商品の支払いが可能なのですが、ポイント制度を設けていません。そのためにmanacaで買い物をしても金銭的なアドバンテージはないのですが、ポイント制がないために還元事業により返すポイントがないということです。わざわざ9ヶ月間の消費税優遇制度のために、システム変更などに伴う膨大なコストは掛けられないと判断したのでしょう。
この点の違いにより、普段からmanacaで買い物をする場合には㈱エムアイシー発行のmanacaを購入するか、切り替えるのが得策かと思います。それ以外には利用できるエリアやカードに載せられる定期に違いはありません。
以下ではmanacaのメリット、デメリットについて記載してみます。
メリット
まず乗車ポイントであるマナカマイレージポイントが還元率が高い点があげられます。
これはmanacaを使った、交通機関の利用金額に応じてポイントが貯まる制度。
注意点は、manaca以外の交通系ICカードは対象外ということ。また利用はもちろんmanacaエリア以内に限られ、更に事業者毎に算出が異なるということです。
例えば今月、名鉄常滑線で1500円分使用して、更に名古屋市営地下鉄で1500円使ったとします。
・名鉄の各路線は2001円からポイント付与
・名古屋市営地下鉄は2000円からポイント付与
以上のような仕組みになっています。上の例だと合計3000円でポイント付与の対象になりそうですが、事業者が異なるので合算しての計算はされません。ですのでポイントが付きませんので注意が必要です。
その点に注意すれば、路線によっては大きな還元が期待できます。例えば豊橋鉄道は10回からの利用で1%の付与なので低い還元率ですが、市営地下鉄や市バスでは2000円以上の利用で少なくとも利用金額の10%がポイントとして付与されます。更に昼間時間での利用が2000円を超えるなら、付与率は20~30%となりますので非常にお得。使い方によっては昼間時間を含めなくても定期券より安くなります。
その他のメリットについては以下に箇条書きしてみます。
- wellow cardでチャージすると0.5%から1%のポイントが還元されます。オリコ提携のカードなので、ポイントは暮らしスマイル。1000円(税込)につき1ポイントの付与ですが、こちらの1ポイントは5円相当なので0.5%の還元率。カードを200万円以上使った場合は、ポイントが2倍付与されるので還元率は1%となります。更にwellow cardのみ、かつ市営地下鉄の自動改札機でオートチャージに対応。
- 名鉄ミューズカードでチャージすると還元率は0.5%。ミュースターポイントが付与されます。このミュースターポイントは、500ポイントからmanacaにチャージできるので、とても消化しやすいポイントと言えます。ただオートチャージには対応していません。
- 各事業者で、バスや鉄道を90分以内に乗り継ぐと40~80円が割り引かれるサービスがあります。ただ結構複雑なパターンもあり、別の事業者間同士でも適用内であったりするので公式サイトでの確認は必要です。
デメリット
- クレカでチャージできるのは、wellow card系と名鉄ミューズカードの2種類のみ。
- wellow card系しかオートチャージに対応していない。
- 名鉄の各路線、名鉄バス、リニモでのマイレージポイントの還元率がやや渋め。豊橋鉄道が最も還元率が悪くなっています。
総評
豊橋鉄道を利用する方で定期も特に必要ない方は、マイレージポイントの還元率が低いためSuicaを利用したほうが良いかもしれません。
ICOCAとPiTaPa

SUGOCA

JR九州発行のICカードで九州地方で走るJRが対象範囲。「福岡・佐賀・大分・熊本エリア」「長崎エリア」「鹿児島エリア」「宮崎エリア」に分けられていますが、このエリアを跨っての利用が出来ないなど融通性がやや欠ける設計。
ICカード自体の有用性ですが、きっぷの購入よりも概ね安上がりになるため利用したほうが良さそうです。
メリット
- SUGOCAでの乗車の度に、運賃の1%がJRキューポとして還元されます。
- JQ CARD系のクレジットカードのみですが、オートチャージに対応。通常のチャージには対応していないようです。基本的にチャージの度に200円に毎に1JRキューポが貯まるので、還元率は0.5%。招待制で取得できるJQ CARD エポスゴールドを持っているならば、特典を利用して還元率を1.5%にまで引き上げることが出来ます。更にリボ設定や50万円以上の利用だとそれぞれ0.5%の還元が加わり2.5%。乗車ポイントと合わせると3.5%にまでアップが可能。
- 貯まったJRキューボは、SUGOCAの残高にチャージ可能なのでポイント消化に難儀するようなことはありません。
デメリット
- SUGOCAを電子マネーとして利用できますが、基本的にはポイント還元なし。加盟店のみJRキューポが与えられますが、店舗による違いがあるものの、 基本的に200円につき1ポイントなので還元率的にはやや不満。
- 乗車によるポイント付与が、「はやかけん」などと比較して低め。
総評
一般的なJQ CARDオートチャージを利用するなら、JRキューポの還元率は乗車ポイントと合わせて1.5%。Suica×ビューカードと還元率は同等なので使いやすい方を選ぶと良いでしょう。
nimoca

九州地方で公共交通機関を敷設する西日本鉄道発行のICカードです。
西鉄の電車やバスを始め、佐賀市バス、熊本市バスなどをnimocaエアリアとし乗車によるポイントが付与されます。鉄道バス利用において全国相互利用が適用されるカードですので、ポイントが付かないもののSuicaエリアなどでも使用可能。
メリット
- 鉄道において乗車ポイント最低1%付与される。ひと月で鉄道を201回以上利用して2%。41回以上は3%と還元率が回数により上乗せされます。乗車ポイントである電子マネーnimocaは、残高にチャージできるので使いみちに困ることは無いでしょう。
- バスや市電については更に還元率がアップ。nimocaエリア内のバス事業者や当月利用金額により約4.5%~11%のポイント還元が得られます。
- オートチャージ、クイックチャージが可能。ただしnimoca系のクレカに限られ、ポイントも1000円につき3円と渋い。
デメリット
- 街のお店でも使用可能ですが、200円(税抜)につき1ポイント(1manaca)。やや低いので高還元率クレカなどで買い物をしたほうが、お得度が高いです。ただしnimoca系クレカによっては、1000円につき3ポイント貯まるカードもあるので、合計還元率が約0.8%になる場合があります。
総評
はやかけん

福岡市交通局が発行するICカード。市バス事業は行っていないので、市営地下鉄利用者が主なターゲット。こちらも交通機関において、全国相互利用可能なカードとなります。
メリット
- 地下鉄利用による乗車ポイントが割と高め。1ヶ月の乗車利用金額が集計され、翌月に金額に応じて還付されます。固定ポイントとボーナスポイントを合わせて、還元率は約2%~8.6%になります。
- 全国でも珍しく、ひと駅だけの利用でポイントが付きます。ひと駅の運賃は大人210円で、一律100ポイントが付与。1区の6ヶ月定期券は44120円なので、一月あたりで7353円。ひと駅ポイントで減算した運賃は110円なので、月に40回利用したとしても4400円。ひと駅だけなら、回数次第で定期よりもだいぶ安くなります。
デメリット
- はやかけんを使用して、コンビニなどを始めとするチェーン店などで使用可能。使える範囲は広いですが、加盟店の設定はないので買い物によるポイントは一切付与されません。
- はやかけん残高へのチャージは現金のみで、クレカによるチャージには未対応。