ここ数年に交通系ICカードが増え続けていますが、関西圏で鉄道、バス利用者向けに発行されているカードの代表格が「icoca」と「PiTaPa」。
カードに残高をチャージさえすれば、いちいち切符を買うこともなくスームズに乗車。利便性の良さからそれぞれ多くの人々に支持される発行枚数を誇ります。
そのようなicoca、PiTaPaですが利便性の他に一体何がお得で、どこが不便なのか分かりにくいところがありますので簡単にまとめてみました。
目次
ICOCAについて
JR西日本に発行する交通系ICカードで、2019年9月時点で発行枚数が2000万枚を越えるなど大いに普及しているカードです。予めカードに残高をチャージ(プリペイド)して使うタイプ。
ICOCAの利用可能エリアは、近畿地方、中国地方、北陸地方、四国地方で運営されているJRの路線を中心に、京都市営地下鉄や近鉄など取扱事業者は複数。またICOCAは交通系ICカードの全国相互利用に加盟しているため、関東や九州地方など他エリアでも利用可能。ただ定期券を搭載したICカードについては、ICOCAエリアに限られ更にエリア内でも全ての路線で発行できるわけでもなく、紀伊本線など一部除外される路線もあります。
ICOCAにチャージ
ICOCAは現金によるチャージが基本ですが、クレジットカードによるチャージにも対応しています。
そのためにはベーシックなICOCAではなく、SMART ICOCAを購入する必要があります。オートチャージには対応しておらず、駅に設置されているクイックチャージ機や自動券売機を使っての残高補充作業となります。
チャージに使えるクレジットカードは、チャージの際に付与されるポイントをICOCA残高にチャージできるJR西日本発行のJ-WESTカードが代表的。
それだけでなくVISA、MasterCard、JCBにも対応しているので多くのクレカでチャージが可能と便利な仕様になっています。
ただ注意する点がありリクルートカードやエポスカードなどは、それぞれのカード会社が設定したポイントが付与されますが、楽天カードのようにチャージは出来ても、楽天スーパーポイントがもらえない場合があるということです。そのためお手持のカードでのチャージでポイントが付くかどうか発行会社に確認することが大事。
鉄道やバスでの利用
icocaで交通機関を利用した場合、通常の切符には無い特典があります。それは利用回数ポイントと時間指定ポイントが付与される場合があるということです。
この乗車ポイントは再びICOCAにチャージできるので、消化できず無駄になるということが発生しづらいのがメリット。
利用回数ポイントとは、ひと月で同一料金の区間をicocoaで乗車した場合に加算されるポイントです。注意点は11回以上利用が必要なこと。
例えば220円の区間を12回利用すると、合計金額は2640円。この金額の10%がポイントとして付与されるので、264ポイントが得られることになります。
この仕組は使い方によって、恩恵があったりなかったりなので比較表を作ってみました。
例はJR湖西線の和邇駅~大津京駅間で見てみます。同区間の運賃は片道で330円になります。比較に使う支払い方法は、現金による切符、ICOCA、J-WESTカードでチャージしたSMART-ICOCA、Suica、定期券の5通り。
*SMART-ICOCAはJ-WESTカードでチャージすると1000円あたりで5ポイント付与で還元率は0.5%になります。そのポイントをICOCAにチャージすると実質的な割引になります。表の料金はチャージにより得られたポイントを引いた値になります。
*Suicaはビューカードでチャージすると1000円あたり15ポイントが付与。ポイントはチャージできるので実質的な割引になります。表の数値は減算後の料金で、分かりやすいように状況に応じて1の位を切り上げ、切り下げをしています。
支払手段 / 1ヶ月の利用回数 | 6回 | 12回 | 40回 |
---|---|---|---|
切符 | 1980円 | 3960円 | 13200円 |
ICOCA | 1980円 | 3564円 (還元ポイントを引いた料金) | 11880円 (還元ポイントを引いた料金) |
SMART-ICOCA | 1970円 | 3546円 (還元ポイントを引いた料金) | 11820円 (還元ポイントを引いた料金) |
Suica | 1950円 | 3900円 | 13000円 |
定期(1ヶ月) | 9900円 |
表で分かるように、利用回数が少ない場合はSuicaが最安。11回を越えるとICOCAが安くなり、40回ともなると定期が大幅に最安になります。
ですので個人個人のライフスタイルにより、どれがお得なのか変化しますのでどれが一番オトクなのか比べてみると良いでしょう。
次は同じく乗車割引である時間帯指定ポイントを見てみます。
こちらの制度は特定の路線で特定の時間帯や曜日に乗降すると割引が受けられるというもの。具体的には、
・適用路線はJR京都線、JR神戸線、JR宝塚線、JR東西線の一部とわずか。
・平日の10:00~17:00か土日祝日の全日、年末年始の全日に限られます。
・同一区間を4回以上利用すると、4回目から運賃の30~50%の乗車ポイントを受けられる。
例えばJR京都線の京都駅~高槻駅間をひと月に40回利用するとします。
京都~高槻駅間の運賃は400円。最初の3回はポイントが付かないので1200円。残りの37回の運賃合計は14800円。14800円の50%である7400ポイントがもらえます。ポイントを運賃総額から引くと総計8600円になります。
同区間の1ヶ月の定期代が11,880円ですので、途中下車で寄り道などをしなければICOCAの利用で大幅に節約できるということになります。
こちらも使い方次第ですので、条件に当てはまる方は大いに検討の余地があります。
店舗でICOCAを使う
ICOCAを電子マネーとして街のお店で使うことも出来ます。
対応店舗はコンビニエンスストアを始めとするチェーン店や、街の小さな店舗でも使えたりします。 ただし使ってもポイントが付与されません。。
SMART-ICOCAにポイントが付くクレカでチャージして、それを店舗で使えばクレカを使うのと同等のポイントが貰えます。が現金でチャージしたICOCAについては旨味がありません。
ポイントが付かないと述べてきましたがICOCA加盟店に関しては別。加盟しているお店はトーヨーカードーやデニーズなどそこそこ対応している状況。
加盟店で使うと200円に毎に1ICOCAポイントが付与されます。還元率にすると0.5%と少なめ。
このICOCAポイントの良い点は、ICOCA残高にチャージして電車やバスの乗車に再び使えるので無駄になることがないことです。
還元率が低いのが難点で、クレカを使ったほうが効率が良いのですが、クレカ固有のポイントより運賃の足しに出来たほうが良いという場合にはオススメできます。
PiTaPaについて
(㈱)スルッとKANSAIが発行する交通系ICカードで、近畿地方の公共交通機関での利用を主にリリースされました。私鉄や私バス、市営バスでの導入からサービスが始まりました。
ICOCAとはJR、私鉄という違いで棲み分けてきましたが2006年の相互利用開始に始まり、2018年にはICOCAエリアでのPiTaPa利用によるポストペイ方式が導入され益々便利になってきています。
PiTaPaを特徴づけているのが、料金の支払いにチャージ式ではなくポストペイ式を採用している点。チャージの際の煩わしい作業から開放され、よりスマートな通勤、通学が可能となっています。
PiTaPaは交通機関における全国相互利用の対象となるICカードですので、ICOCAやSuicaなど他エリアでも使用可能。ただしポストペイで利用するには設備やシステムの問題から関西圏の一部のみとなっています。
バスを除くポストペイで利用可能な鉄道を以下にリストしました。利用可能となっている路線でもリフトやケーブルカーなど一部利用できないラインもあります。
PiTaPaでポストペイを使って乗れる路線(2019年9月時点) |
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大阪メトロ |
大阪モノレール |
叡山電鉄 |
京阪電車 |
京都市営地下鉄 |
近鉄 |
北大阪急行電鉄 |
神戸電鉄 |
神戸市営地下鉄 |
山陽電鉄 |
静岡鉄道 |
泉北線 |
阪急電鉄 |
南海電鉄 |
のせでん |
阪堺電車 |
阪神電車 |
北神線 |
ポートライナー・六甲ライナー |
水間鉄道 |
嵐電 |
以下はJR西日本 |
赤穂線(相生駅 ~播州赤穂駅) |
大阪環状線 |
おおさか東線 |
加古川線(加古川駅 ~ 西脇市駅) |
学研都市線 |
関西空港線 |
草津線 |
湖西線 |
嵯峨野線(京都駅~園部駅) |
桜井線 |
山陽本線(神戸駅 ~相生駅) |
東海道本線(神戸駅~米原駅) |
東西線 |
奈良線 |
阪和線 |
福知山線(尼崎駅~篠山口駅) |
北陸本線(米原駅~近江塩津駅) |
ゆめ咲線 |
大和路線(難波駅~加茂駅) |
和田岬線 |
和歌山線(王寺駅~五条駅) |
色々と便利に思えるpitapaですが発行枚数は2019年9月時点で約300万枚と、ICOCA(2000万枚以上)に大きく差を付けられているのが現状。
PiTaPaを運営するスルッと関西ではどうにか社会に普及させようと、対応路線の増設やサービス向上を繰り返している最中です。
以下では2019年におけるPiTaPaのメリットやデメリットについてサービスごとに見てみます。
鉄道やバスでの利用
PiTaPaにおいても切符を現金で購入してそのまま乗車する通常の方法よりもお得な仕組みが用意されています。
ICOCAと同じように利用回数割引や利用額割引がそれに該当します。
ICOCAの時間帯指定ポイントほど使いようによっては劇的に運賃を節約できる制度はありませんが、PiTaPaの割引制度がカバーする路線をご利用の方には魅力的なサービスと言えるでしょう。
街で買い物
PiTaPaは電子マネーとして町中のお店でも利用することが出来ます。ただ気をつけなくてはならないことは、他のメジャーな交通系ICと違い電子マネーの相互利用に対応していないことです。
通常コンビニは多くの電子マネーでの代金支払いが可能なのですが、PiTaPaについてはファミリーマート、ローソンの一部店舗に限られます。
電子マネーが使えるかどうかは、公式サイトでの確認や店頭やレジでの支払い方法一覧にPiTaPaのロゴが記載されているかどうかなどで判断します。
PiTaPaで買い物をすると、ショップdeポイントが付与されます。通常は100円につき1ポイントが加算されますが店舗ごとに違いが有り、キャンペーンなどでもボーナスポイントが貰える場合があります。
貯めたポイントは、500ポイントにつき50円がPiTaPaの請求代金から引かれます。ただ残念なのは還元率の低さ。500ポイントを貯めるには100円につき1ポイントだと5万円を使わなくてはなりません。
5万円使って50円の割引だと、還元率は0.1%。無いに等しいと言えるかもしれません。
また運賃が割り引かれて、ポイントが消失するわけでは有りません。
ショップdeポイントは運賃の充当や景品の交換などには出来ませんが、マイルに交換可能。
しかしながらマイルについても非常に渋い状況。
例えばanaマイルですと交換レートは500ショップdeポイントにつき20マイル。1マイルをゲットするのに2500円分の買い物が必要なので、還元率は0.04%と極小。
一般的なANAカードの還元率は0.5%なので、マイルを貯めるにはほとんど意味がないと言えます。
これらのことからPiTaPaを電子マネーとして利用するのはほどんど無駄。ですので普段の買い物は高還元率のクレカやバーコード決済の利用を強くおすすめします。
ICOCAとPiTaPaのどちらを使ったほうが良いか
近畿エリアの交通機関を中心にサービスを展開する2つのICカードですが、どちらを使ったほうが良いのかケースバイケース。
鉄道とバスを組み合わせたり、乗車区間も香料に入れ、更にはクレジットカード加味するとベストチョイスを定めるのは難しいので、ここでは代表的な例を取り上げて説明します。
PiTaPaではスタシア系やe-kenetのクレカが有利
阪急電鉄・能勢電鉄では特にクレカによるメリットが大きくなっています。
スタシア系のPiTaPaを使って区間指定割引運賃(1ヶ月分の定期と同額)が適用されると、運賃の10%相当分をsポイントで付与。sポイントは景品の交換や商品クーポンに使えるほか、電気代の充当にも使えるので無駄が出にくいのが強み。ただチャージではポイントが付きません。
e-kenet VISA PiTaPaカードで京阪電車を利用すると、乗車代金の1%相当の「おけいはんポイント」が貯まり、クーポンと交換できます。
PiTaPaの利用では楽天カードなど汎用性の高いカードが使えないので、上のようなカードを交通用と割り切って使うの良いかと思います。
JR西日本の路線ではICOCA
PiTaPaでもJR西日本の指定路線でポストペイでの支払いが可能で、指定外でもチャージで対応できます。
利用回数割引や時間指定割引も適用されますが、チャージや鉄道利用によるポイント付与はありません。
その点、ICOCAであれば例えばエポスゴールドをチャージ。選べるポイントアップショップでJR西日本を指定するとポイントが3倍になり、エポスポイントの還元率が1.5%になるなどのメリットがあります。エポスポイントはエポスVisaプリペイドカードにチャージできるので、全く使いみちに困ることは有りません。
割引額の大きいICOCAの利用回数割引や時間指定割引はJR西日本の一部路線のみ。ICOCAでは使えない路線でPiPaPaによる利用回数割引や指定割引もあるので、本当に使い方次第で何がお得なのか変わってきます。